腐敗と発酵は何がどう違う？

発酵食品はその名の通り、微生物の力によって原料となる食材を発酵させて作られます。ただこのように言うと、「発酵食品って、食材を腐らせて作るものなの？」と思ってしまいますよね。しかし腐敗と発酵とは全く異なります。

腐敗とは

まずは腐敗とは何なのか、ということについてご説明させていただきます。

腐敗とは、真菌や腐敗細菌、酵母といった微生物の力によって、その食品の中に含まれている有機物が分解される状態のことをいいます。有機物とは窒素を含んでいる物質のことをいい、代表的なものとしてはたんぱく質が挙げられます。

そしてこれらの微生物によって食品が腐敗、つまり腐ってしまうと、その中でインドールやケトンといった腐敗アミンが生成されて悪臭をはなつようになります。また腐敗によって病原性の微生物が増殖した場合、これを食べると体内で有毒物質が発生してしまいます。この状態が、いわゆる食中毒ですね。

食べ物が腐敗する状況は繁殖する微生物や置かれた環境（温度や湿度など）によって異なり、同じ食品であっても全く異なる腐敗の仕方をすることがあります。

次に、発酵とは何なのかということについてご説明させていただきます。

発酵とは、原料となる食材に酵母菌や乳酸菌といった微生物を加え、その微生物の力によってその食材に含まれている物質を分解させることをいいます。

食品を発酵させることによって、健康効果やダイエット効果、美容効果といった人にとって嬉しい物質が生成されるのです。

発酵食品には、ヨーグルトや納豆、チーズ、キムチ、味噌、醤油、日本酒など、様々な種類があります。

では、腐敗と発酵とは、何がどう異なるのでしょうか。上では腐敗と発酵についてそれぞれご紹介させていただきましたが、どちらも「食材に含まれる成分が微生物の力によって分解される」という過程は同じです。

そして「腐敗」させた場合はそれによって人体に有害となる物質が生成され、「発酵」させた場合は人にとって嬉しい物質が生成されます。

ということはつまり、「腐敗」と「発酵」というのは、その根底にあるものは基本的に同じで、それによって生成される物質や効果が人体に有害なものである場合は「腐敗」、人体に有益なものである場合は「発酵」と呼んでいるにすぎないというわけなのです。

全く別物のようにも思える「腐敗」と「発酵」ですが、実はそれによって出来上がったものにどのような効果があるのか、という違いしかなかったのですね。「腐敗」と言われるとどうしてもマイナスなことばかり思い浮かべがちですが、実は私たち人間は、この「腐敗」によって様々な恩恵を受けているといえるのです。

以上のように「腐敗」と「発酵」とは、全く別物のようでそのメカニズムに関してはほとんど同じといえます。発酵食品を作る際にはその材料を腐敗させてしまわないよう、温度や湿度、pH値の管理をしっかりと行っていくことが大切です。